キーボードの大きさという一点においても,フルサイズからTKL,自作キーボードのスタンダードである60%.ファンクションキーをのこし,TKLらしい使いがってを残しながら小型化をしている75%キーボードなどが存在する.もともと,日本語配列のTKLキーボードを愛用していた.そこから一気に60%なども経ることなく,40%キーボードを使い始めた.92キーかから,51キーに.この41キーとの決別について記録していく.
希望
自作キーボードにはかなり興味があったが,ハードルが高く(金銭的な問題や移行コスト)なかなか手をだせるものではなかった.最近でははんだ付けの必要のないDIYキットなども増えてきてはいるが,値段を考えると,やはり少し尻込みしてしまう.自分の気持ちが自作キーボー ドに近づいたり,遠ざかったりしていく中で,一つの動画に出会う.ガジェットが好きな人ならばみんな知っている瀬戸弘司氏の天キーに参加する動画である.
この動画を見て,自分の自作キーボードの欲求に火がついた.それまで断片的にしか摂取してこなかった自作キーボードの要素を一気に何時間も見せられれば当然といえば当然なのかもしれない.その中で,40%キーボードのO51Go,R47Goはかなり衝撃的であった.
沼への入門
自作キーボードはいわゆるメーカーが出しているキーボードとは本質的には同じだが,それ以外の部分でかなり多くの違いがあると考える.
まずは自由度.自分で作れるというのは,自分ではんだ付けをできるにとどまらない.自分で設計さえできれば,どんな形にも,どんなデザインにもできる.基盤は汎用のものを使っても,どんなスイッチをつかうか,どんなキーキャップ,スタビライザーを使うか,どんなケースを使うかなど,かなり多くの部分をカスタマイズできる.
次に思想.自作キーボードなんてほとんど知らないペーペーではあるがキーボードの配列には思想が宿っていると思う.最初はタイプライターが壊れないように打ちづらく計算されたキー配 列を,多くの人が愛し,そしてその枠に囚われながらも新しいものを追い求めていく姿は想像に固くない.
最後に達成感.自分で作ったという事実は,物質的であったキーボードというもの.ただインターフェースだったというキーボードに魂を宿らせうる行為である.
おそらく他にも様々な違いがあるだろうが,私が考えるだけでもこれだけの違いがある.
40%キーボードに話を戻そう.最初はただ,かっこいいだけの打ちづらそうなキーボードに見えたというのは正直なところだ.記号キーが少ない点はプログラミングをするときに,無駄に時間を食う要素になり得るし,持ち運びやすさという点だけを考えても, 60%のキーボードとほとんど大差ない.ましてや自作キーボードの多くは有線接続である.しかし,そんな思惑がありながらも,そのかっこ よさに心を惹かれてついO51Goを購入してしまったというのが結果である.
O51Goを買った直後はかなり嬉しかった.届いて組み立てているときも,はんだ付けこそなかったものの,自分でキーボードを組み立てるという体験はかなり有意義なものだった.
地獄の始まり.不快感が止まらない.
地獄の時間はそこから始まった.
最初に躓いたのはただ文字を打つという点だ,O51Goの最初の設定では,中央に機能付きのキーを配置して,その両サイドにアルファベットを分けるという設定であった.つまり,ホームポジションの中央に一列分キーが存在するために,肩を少し広げる必要があった.また,運指の問題でYキーを左手で,Bキーを右手で押すケースがあったため,中央に一列分キーがあると打ちづらくてしょうがなか った.
これが最初は慣れず,結局その一列の部分をなくして,通常の打ち方ができるように設定した.
次に配列部分だ.O51Goは直行配列であり,通常のキーボードとは少しだけ勝手が違う.具体的にはZキーが押しづらい.ただ,この問題はすぐに慣れた.
記号キーの配置の問題はかなりつきまとった問題である(これはある程度慣れた今でも問題である).基本的にキーの数が足りないので,レイヤーと呼ばれるものを使って,複数のキーを同時押しすることによって一つのキーに複数の役割を果たさせるのだが,これが難しい.日本語配列のように配置しようと思っても,自分が記号を置きたい場所にはキーが存在しないのである.したがって,慣れるまで何回も使うしかない.
本当に最初の3日間は地獄であった.タイピング速度は半分になるし,ミスタイプは倍以上になったし,記号の位置がわからないからとりあえず記号があった場所を適当に押して,目当ての文字を出すなどしていた.
このキーボードで作業することは諦めて,もともと持っていたキーボードに戻そうとしても,少し慣れてしまったが故に,ぎこちなく.このまま突き進むか戻るかを迫られた場面もあった.せっかく買ったのだからと前に進んでも光はあるのかと,かなり迷った.それでも先に進もうと考えたのはキーボードへの愛着であったのかもしれない.
地獄が終わればそこは楽園なのかもしれない.そう願い,使い続けた.
山場を超えて
まだ10日ほどしか使っていないが,使用する上での不快感はかなりなくなった.記号キーの位置はある程度覚えた.真ん中の一列も「こっちのほうがやっぱかっこいいよな」というモチベーションだけで戻してみた結果,1日で慣れてしまった.41キーとの決別によって得られたものもある.
例えばタイピング速度.記号などが含まれる文字入力に関しては少しもたつくが,そうでない文章作成ではエンターキーが近いことやスペースキーが押しやすいことでかなり早く文章の作成をすることができている.
また,普段はキーボードを持ち運ばず,ラップトップについているキーボードを使っていたが,小さくなったことで持ち運びができるようになり,どこでも気持ちよくタイピングができている(荷物が増えたせいで悩んでいるのはまた別の話). まだまだ慣れない部分も多いが,時間が解決してくれるだろう.
結局下のような構成になっている.